波 紋




『これは面白い・・・。』

冷やかしめいた雑鬼の言葉が耳を掠めていく。

『好きに云うがいい。』

耳障りな雑音に耳を貸す余地も無いとばかりに、瞳を伏せる。

近くに眠る律にも及ばぬ様に無意識に体が動く。

だが・・耳障りの悪い雑音は尚も続く。

 

『あの青嵐とも在ろうモノがね・・。』

『人の子守とは何と滑稽なことだろうか、そうは思わないか?』

せせら笑う音と共に、

クチクチ・・キチキチ・・と煩い言葉が響く。

 

 

 

『ふん・・。下らん、何とでも云え。』

ゆっくりと開かれた瞳には、人の其れとは異なる彩色の眼。

鋭い光を孕み、在らぬ方向を射抜く。

『私は、このガキをただ護るだけだ・・そう、護り続けるのだ。』

逆らう事が赦されぬ主命によって・・。

主人が望んだのだ。

それが全てだ。

 

 

 

ふと、視線を落とす先。

小さな寝息が聴こえる。

重なる面影に・・小さく深く吐息を絞る。

 

 

本当に其れだけか?

 

 

 

「私の主人はお前ではない。禍牛だ・・。」

 

 

そう言い放ったのは、他でもない自分自身だ。

 

それなのに・・

 

 

 

何だと言うのだ、この不快な感覚は・・。

 

その面差し、面影が私の心を(在るのかどうかは疑わしいが・・)

 

 

 

 

波立たせる。

 

 

 

 

 

終わり。

 

 

 

 

 

青嵐の独白調です・・。まぁ、設定としては夜に眠りに落ちた律を見ながら

自身の思考に更けているって感じですかね〜。

禍牛の面影と律自身に対しての感情の間に揺れてるって感じです(苦笑)