あの時の判断も・・感情も・・間違っていたなんて、今一度だって

思った事は無かったよ。

だけどね・・だけどさ・・。



時折、不意に見せるその横顔が・・


辛いよ。


・・・それはきっと、オレも同じに思ってたからなんだろうな。


いつの間にか、こんなにもアイツ等と過ごす時間が大きくなっちゃってたんだね・・

ねぇ、イルカ・・。




   


              『現』 と 『朧』 の 狭間





「手・・冷たいじゃん。」

「どっちが・・・。」

苦笑を浮かべてイルカが答える。見詰ていた指先に自分よりも体温の低い手が触れてきたのだ。

顔を上げれば、襟巻きを口元深くまで上げたカカシの姿があった。

「考え事・・?この頃・・多いね。」

「・・何?拗ねてるの?」

「違うけど・・、まぁ・・それも少し。・・じゃなくって大体、同じ事考えてるのかなって?」

くすくす・・と笑うと、―うん、かもね。と立ち上がった。

「・・イルカに言おうか、言うまいか・・すっごい考えたんだけど、言うよ・・。」

「何・・?」

よいしょ。とカカシの横に腰を下ろす。この距離が一番、お互いに落ち着く距離。

木の葉の頃は離れすぎていたのかもしれない・・だけど、今もそれとは違う欠落感を抱えている。

何故だろう。その感覚が歯痒い・・。

「こないだね・・イルカに内緒でサクラに会ったんだ。」

「え?!」

「や・・もちろん。この姿でじゃないし、偶然だけどね・・。波の国ってあったでしょ。
 
 あそこにね、この前行ったでしょ。」

イルカはカカシの話しに耳を静かに傾ける。

カカシはとある請負い任務で波の国の大地主に書状を届けに行ったのだ。

もちろんイルカも同行した。途中、二手に分かれたその時にカカシはサクラに出遭ったと言う。


彼女は成人の女性へと変貌を遂げていたという。


「だけどね・・・サクラ,あの子ね、上忍にはならなかったんだって。」

やはり彼女には影響が残っていたのか。小さくイルカが溜息を漏らす。

「アレで諦めてくれるといいんだけどなぁ。」

「それはイルカが一番よく知ってるでしょ。・・アイツ等の諦めの悪さは。」

「あぁ・・天下一品だと思うよ。」

二人は顔を見合わせると、肩を竦めて笑いあう。どうやら自分達は避けられそうもなかった。

それならば、正面から堂々と扱ってやるだけどと。









「そう。良かった・・・。」

「サクラちゃんは、この事をずっと・・。」

「う・・ん。昔から幻術にだけはちょっとね。・・きっと、ナルトたちと違って女の子は繊細だからよく憶えてるのよv」

ニコっと笑って、サクラは窓辺に立った。

「サクラ・・?」

「ねぇ、お願い!!先生たちを連れ戻して。・・そしたら、そしたら・・私、特別上忍試験受けるわ。」

その手には、しっかりといつかナルトとサスケが寄越した特別上忍試験への推薦状が握られていた。

「どこまでやれるか分からないけど、私も踏み出さないとね。

・・その為にもイルカ先生とカカシ先生には戻ってきて欲しいの。」

サクラの瞳は昔から変わらない。真っ直ぐで真摯だ。

総ての事実を受け止めて、どうにか包容していこうという強さを持っている。

だからきっと・・彼女は好かれるのだろう。

「分かったてばよ。おれだってイルカ先生たちには戻ってきて欲しいってばよ。なぁ、サスケ!」

「フン・・たく、世話が焼ける教師だぜ。」

「ありがとう!サスケ君、ナルト!」

へへへ・・と得意気にナルトは笑った。












「来るよ。」

「全く・・こりないお子様たちだね。」


二人の前に再び若き暗部の青年等が現れたのは、それから数日も立たない日だった。

「この分からずや!」

「分からずやで結構。これでもイイ年だからねぇ。」

にぃっとカカシは笑ってみせる。

そう、やっと同じラインに立ったんだ。面白いじゃないか・・どこまでも

高みへとと登りつめて来るこの若き存在。・・一度くらいは合い塗れる事もしてみたかった。

横を見れば,、イルカが小さく身震いした。

「・・ヤバいかもな。」

そう呟いて、ぺろり・・と唇を舐めた。これは疼いてる証拠だ。

久しぶりに獣が騒ぎ出す。

開始の合図は・・雲間から射した一条の光だった・・・。









強い相手を前にした歓喜の奮えと共に、ナルトたちには微かに

幼き頃のあの記憶からくる震えが混じる。

だけど、いつしかそんな事は消え失せる。

今、この目の前にいる師たちと本気で戦えるのだ。


またイルカたちも同じだ。少しでも手を抜けば痛手は免れないだろう。

ぐぐぐ・・と押し寄せて来る殺気はある種の心地よさをも生む。

あぁ・・血の匂いだ。なんて思いながら興奮していく自分が目覚める。

こうなったら誰も止める事なんて出来やしない。イルカにツラれてカカシの殺気も濃さを増す。

互いに互いの血に塗れて・・白い大地に朱を落とす。

ワクワクが止まらない。果てしない高揚感が自分等を包み込んでいた・・・。

「久しぶりに楽しそうだね。」

「どっちが!」


その光景に魅せられていく・・。










 

 




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