「イルカ先生!!」
力が入らず・・重たい目蓋を押し開ける。
ぼやける視界に・・心配そうなアノ人の顔・・。
あぁ・・やっと逢えた。
再び瞳を閉じようとすると、それを止められる。
「解毒剤です。飲んでください!!」
「う・・」
無理やりに口をこじ開けられて流し込まれた苦味を感じる液体。
思わず噎せ返り・・げほげほ・・と。
「げほげほ・・はぁはぁ・・」
苦しくって仕方がなかった・・。
・・まだ生きてるのか・・?
「イルカ先生・・良かった。」
自分が理解するよりも早く相手に強く抱きしめられた・・。
悴んだ身体を温めるかのように包まれる。
「ど・・どうして・・」
上手く話すことが出来ない。
今、自分に起きていることが分からない・・。
「・・とても驚きました。やっとの思いで里に帰り・・
その足で誰よりも早くアナタに逢いたくって
来て見れば・・ここでアナタが倒れていた。様子からみて毒を服用したのだと
すぐにわかりました。なんで・・こんなことを・・」
未だぼぉ〜っとする頭と視界でも分かるぐらい
混乱していて・・今にも泣き出しそうな
アナタの顔・・。
なんだか・・とても安心して微笑んだ。
力の入らない手を持ち上げてその顔に触れた・・。
「・・どうしても・・アナタに・・逢いた・・かったから・・です。」
途切れ途切れに紡ぐ言葉・・。
上手く聞こえただろうか?
カカシ先生の声が震えている。
「バカですよ・・アンタ。」
「ですね・・。」
くすり・・と笑うと唇が重ねられる。
ゆっくり・・ゆっくりと・・深くなる口接け・・。
相手の唇の温かかさに・・
伝わる鼓動に・・
あぁ・・良かった。
とだけ素直に思った。
どうやら・・最期の願いは叶ったらしい。
信じ続ける・・強さ。
思い続けられる強さ・・。
その強さが強い人ほど・・その祈りは届くのだろう。
「この『折鶴』を添えるのは・・まだ早いですよ。
イルカ先生の中で少しでも・・『淡雪』の印象は変わりましたか?」
こつん・・と額を合わされれて見つめられる。
「・・・『祈り』は届きましたよ。オレのとこまで・・。」
やさしく呟かれるその言葉がくすぐったい・・。
「オレの祈りは届きましたか・・」
答えられずにいるオレに対して・・何回も口接けしながら尋ねてくる。
あなたが傍にいる・・。その実感だけで充分なのに・・。
あなたの言葉は温かい。
「・・今やっと、届きました。」
「よかった・・。」
白い小さな小さな5花弁の花・・
『淡雪』・・その香とともに・・祈りも届けておくれ・・。
遠く離れたあの人がオレのもとへと帰ってくるように・・。
オレと共に祈ってくれ・・。
終わり。
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