オレがアンタを見かけたのは、これが三度目。

               一体、どれが本当のアンタなんでしょうね・・・

                     ねぇ、イルカ先生。





                   「夢見草」




                   初めてアンタを見かけたのは、こんなに明るい日差しの下ではなかった。

                   それは戦の動乱の中、多くの命が失われていく中で・・。

                 まぁ、正確に言ってしまったらアレがアンタだとは知らなかったんだよね。

                  業火の如く燃え盛る炎、敵も見方も相まみれて血で血を争う戦いの中で、

                        オレたち四人一組で組まれた小隊は

  

                            敵陣から奪った巻物を携えて先を急いでいた。

                     そう、その中にオレとアンタはいたんだよ・・。


                     アンタは「イルカ」とは名乗っていなかった。

              「焔」−ほむら−と名乗り冷徹で計算高く、任務遂行の為なら犠牲を厭わない奴で

                  はっきり言ってオレは「焔」が嫌いだったよ・・。

              「何もワザワザそんな道を選ばないでも、川沿いの道を迂回して行けば確実に
 
                         安全を確保しつつ
里へ戻れるはずだ。」

                   「ああ、確かにその通りだよ。ただ、それは時間がある場合はだ・・

                        今は一刻の猶予も許されないんだ。


                多少の犠牲を払ったとしても最短の道で里へ帰ることを我々は選択すべきだ。」


                     顔色ひとつ変えずに熱弁をふるうでもなく、淡々と語られる口調は

                   若いかかしの神経を逆撫でするには十分だった。


                            「なぁ、お前!」

                殴りかかろうとしたかかしの腕は寸でのところで止められた。

               「青いなぁ〜、かかし。この役はオレが引き受けるから喧嘩しなさんな。」

                                      「嵯模・・。」

                      自分の腕を掴む手を振り払うと相手をみあげた。

                      「その代わり、必ず巻物を里へ届けろよ。」

                              一言残すと、もうその場には嵯模の姿はなかった。

                  どうすることもできずに嵯模の消えた方向を見ていたオレにたいし、

                        アンタは目もくれずに先に進んだんだよ。

                 もちろん、今となってはアンタの決断は間違っていたとは言い切れない・・

                         お陰で巻物は里に無事に届いたしな。

                       でも・・嵯模は二度とオレらの前に姿を現すことは無かったよ。







                            そして二度目が狼ノ森・・。



                 所謂、立ち入り禁止区域=禁域ね。限られた者しか入ることの許されぬ森。

                       その最奥には見事に咲き誇る一本の桜の大木がある。

                     その根元には上層部と暗部ぐらいしか知る由のない慰霊碑が


                              ひっそりとたっている。

                     そこに刻まれているのは誰にも知られる事のない英雄たちの名・・

                            暗部の殉死者たちを
讃えたものだ。

               オレは結構、この森が気に入っていてね・・静かで誰にも邪魔されることなく己と向き合えてね。

                          まぁ本当に偶然だったよ。オレがいつもの様に木の上で休んでいると、

                    滅多に人の来ない慰霊碑の前に
一人の暗部の男が佇んでいた。

                      どうやらこちらの気配には気付いてはいないらしい・・・。

                         男は静かに慰霊碑に花を手向けるとおもむろにその面を外した。

                             あまり見かけぬ顔だった。


                          鼻梁に真一文字の傷痕をもった男は、その漆黒の瞳を揺らしていた。

                                男は何も言わずに、ただ静かに泣いていたのだ。


                               ・・初めてだった。
                      

                                      こんなに静かに泣く者を見るのは・・。

                         肩を震わせるのでもなく、大声を上げて喚くこともせずに

                                       アンタはただ静かに涙を流していた。

                              「・・・嵯模、朔夜すまない。」

                          絞り出したように小さく呟かれた声を聞いて、その男が「焔」だと分かった。

                    ざわざわ・・っと風が吹き淡い血潮色をした花弁が空へ舞うのに目を奪われ、

                            気が付くとそこにはもう彼の姿はなかった。
 

                    それ以後、「焔」のことは暗部はもちろん狼ノ森でも見かけることはなかった。

                            が・・まさかこんな形で再会するちはねぇ・・



                             しかも「初めまして。」とは驚いたよ。



                                   にこやかな笑みを浮かべて差し出された手を握り返して、

                    「初めまして。今度ナルトたち第七班を受け持つことになった、はたけかかしです。」

                             同じように?二コリと笑ってみせると、どうやら緊張が解けたらしい。

                             腰のところに戯れついている

 

                            ナルトを撫でながら、あれこれと話しだした。どういうわけだ・・?

                          人違いにしては似すぎていないか・・。

                        だが、そんな疑問はすぐに吹き飛んだ。

                    あれから何やかんやで「イルカ先生」と話したり呑みに行くことが増え

 

                                 自然と、彼に過去の記憶がないことを知ったからだ。




                               過去の記憶がないねぇ・・
 
                         だからアンタはそんなに眩しく笑えるんだね、

                                 明るい光のもとで・・


                              それってなんか・・ねぇ。この時、言い表わせない感情が

                           オレの中で渦巻き始めていたのかもしれない。


                        オレと同じトコにいたはずなのに・・なんで?

                 


    


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BGMby:【Little*Music】
        最後の恋


昔、初めて書いたカカイル。
何だか読み返すと目茶目茶・・恥ずかしいっすね。
間違いがいっぱい・・・Uu
大目に見てやってください。
若かったな〜・・自分・・///