木の葉のように
緩やかに・・
永く続いてくれと願ったモノは、すぐにその姿を消す。

霧散させていく・・気がつけばもう、そこにソレがあったことすら・・。

昔からそうだった。


桜も虹も・・・それから冬の寂光も・・。


どれも永くは続いてはくれない。

綺麗だ。と思い、やっと気がついて・・ずっと見ていたいと己が

願いだしていることに気がついた頃には大体遅い。

それらは、淡く・・幻のように消えていた。


愛しいその人たちは・・・。】


なんて虚しいのだろう。


取り残された自身の感情は・・。







だから思った。果敢ないモノは嫌いだと・・。

そんなことを酒の力もあってか、ぽろり・・と零せば

彼は酷く驚いた顔をしていた。



酒の席の帰り道。

ゆっくりとした歩調、草むらの影の虫の音。

まだ昼間の暑さを残したむっとした夜気。

何もかもが緩慢で、気怠い自身の身体にあっている気がした。

何も語るでなく、オレ達は歩いていた。

「・・さっきの話。」

先に沈黙を破ったのはカカシ先生だった。

どうやら、矢張りと言うべきか?先程漏らしてしまった言葉を気にしているらしい。

不味かったか?と思い出来るだけ、笑顔をつくる。

「気にしないで下さい。そんな・・深刻なつもりは無いですよ。ははは・・・」

笑い飛ばして下さいな。とばかりに話すが、どうやらそうもいかないらしい。

嫌だな・・。この雰囲気。

重い・・纏わりつくコレはなんて言うのだろうか。

「意外でしたか?」

先に口を開いたのにも関わらず、言葉を繋げれないでいる彼に気付き、

先を促す。どう続けてやれば話し易いのかという事は、仕事柄心得ている。

案の定、カカシ先生は話し出した。

「えぇ・・ハッキリ言ってビックリしました。その〜・・イルカ先生は

 そういうのもひっくるめて好きなのかなって思ってて・・綺麗なものが。」

「昔程ではないですけどね・・・。苦手ですね・・だって淋しいじゃないですか?」

ぽつり、ぽつり・・と呟くオレ。

自分でもこんな風に続けていく気はなかったのに

ドンドン勝手に口が言葉を紡ぐ。

「だから勢いがあるものは好きですよ、花火とかどっか〜ん!て感じで。

 だけど・・桜なんかだと淋しいんですよ。何か、さっきまで直ぐ近くに

 寄り添っていてくれたのに・・気がつけば、霧散するかのように消えている・・。

 自分が好きだな。大事だな・・なんて認識する前に・・否、気が付かされた

 その次の間には・・・それを失うなんて。耐えられないでしょ。」

すっと視線が細められる。きっと自覚しはじめている・・戒めないといけないのに

その感情は再びオレの中に生まれていた。

戒めろ・・断ち切るんだ。

何かの声が響く。そして言葉が紡がれた。

 「・・だから失う訳にはイカナイ・・そんなものツクラナイ・・

  確固たるものの礎となるだけです。」

そこまで言ってしまってから、ハッと我に帰る。何を口走った・・?!

最後のほうは、口が滑ったとしか言い様がない。何をやってるんんだ!

見れば悲しそうな表情で目の前の彼は佇んでいる。

どうしようもない感情がせり上がってくる。

掛ける言葉が見つからない。どう覆い隠そうか?

どうやって無かったものにしようか?

必死に詮索しはじめる脳内。

見せてはいけないもの・・

吐露してはいけない

生身の感情。



不意に鼻腔を突く甘い香り。

これは・・・。


何か彼が口を開こうとしたみたいだった。

だけど、もう遅い・・。

こんな醜態を晒して、ここにいられる訳もなくって・・。

ならいっそのことだ。

ゆらり・・と身を後方に倒す。

それはきっと、後ろに卒倒したかの様に見えたかもしてない・・だけど違う。

弧を描く己の視界から、彼の姿は消えて代わりに黒い羽。

あぁ・・迎えが来た。なんてぼんやり思い、身を翻した。







「イルカ先生!!」

虚しい響きが夜の闇の中へ呑まれて行く。

一体なにが起こった?

アレが彼の本音・・。だとしたら・・。

そして最後にみた彼の姿は・・迎えにきたあの鳥は・・



【鴉】と重なった。


嫌な予感が現実のものへと変わる音を聴いた。



このままでは自分はイルカを失う・・。


そんなのは絶対に駄目だ。





気が付けば、己は走り出していた。

宛てはあるのか?という自問自答が内側で反響する。

だけど・・きっとそんなことに構ってられない。

尽くせる手は尽くせ。

昔誰かが言っていた。

今、失うわけにはいかないんだ。


やっと互いに自覚しはじめたのに・・・。





  

BGM by:little*music
      【雫】






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ははは・・・やっと更新できましたvvv
コレで後は、最終回へ流れ込めそうです。
結構頭使って書いてるので、疲れますね〜・・・Uu
上手く伝わっていけるといいなぁ。てか・・もう誰も見てない気がする(苦笑)
えへへへ〜・・・。さぁ、今後どうなるでしょうか??